魔法使いの憂鬱日記
魔法界から特別研究員として人間界に派遣された魔法使いA。
兼ねてから人間が嫌いだった彼女を変えたのは、
ひとりの「ニンゲン」の笑顔とやさしさだった。
魔法使いと人間の、決して交わることのない恋の行方なんて
彼女が一番知っているんだ。
1ページ目
魔法が使えたって、
貴方の心は手に入れられない。
臆病なボクはまたセカイを悲観して
ひたすら色を塗り足してゆくだけ。
ー魔法使いAの憂鬱
2ページ目
貴方の好きな本を読んでいる。
物語はハッピーエンド、それだけで眩暈がする。
所詮、ボクは「魔法使い」なんだ。
いくらニンゲンについて勉強したところで
ボクは、
貴方の「好きな人」になんてなれるわけないから。
ハッピーエンドを好む貴方と、
貴方を一等愛してくれる誰かが幸せになれますように。
少しだけ乱暴に、本を閉じた。
ー魔法使いA
3ページ目
叶わない恋だってわかっているから
諦めるとか、できなくて
もしかしたらって可能性に縋って
また、
惨めになって、ひとり泣くんだ。
「貴方が好きだって言ったギターを買って、貴方に、少しでも近づけるなんて思ってしまったボクの浅はかさと傲慢さを、どうか許して。」
ー魔法使いA
最終ページ、4ページ目
時間だ。
魔法界に帰らなければならない。
もう二度と、この世界にくることはないだろう。
寂しいとか、そういう感情より今は
貴方に出逢えてよかったと思うんだ。
貴方のやさしさと、微笑と、歌声と、ギターの音色を
ボクはずぅっと憶えているだろう。
さようなら、ボクの愛したヒト。
涙を流すなんて、ボクも大分、ヒトらしくなったのだろうか。
ー魔法使いA